Irving社は CompactCookingと共に躍進

2016年 3月に連釜の操業を開始したカナダの Irving Pulp and Paper社が行った設備投資は、カナダ製紙業界にとって歴史的な投資であり、1993年以来で最大の設備投資であった。

プロジェクトは2期に分かれており、第1期工事ではチップハンドリング、チップウォッシャーを更新し、14機あったバッチ式の釜を CompactCooking式の連釜に改造した。第2期工事ではパルプドライヤーの更新が含まれる(既設の 3台から新設 1台への更新)。

Irving社からは増産への大きな期待があり、将来的には歩留まりの向上、広葉樹(L材)と針葉樹(N材)のスイッチングにおける操業性、メンテ費用の削減、ランニングコストの削減、パルプ品質の向上に期待感を持っている。ストックホルムでの Valmet Customer Days(2016年開催)で講演した Jim Brewster氏(元シニアプロジェクトアドバイザー)によると、想定した通りの結果が出ており、予想外の良い結果も現れているとのこと。第1期工事はスケジュール通りに完了し、かつ予算を 10%下回った。立ち上げはスムーズで、3日目には目標生産量に到達できた。その後、回収ボイラーの定検までの75日間に渡り連続操業を行った。第1期工事 は600,000人工(人×時間)の内容だったが事故は1件だけで、Irving社からのサポートが優れていた証拠と言える。

熟考した設計とオペレータ教育

L材 ‐ N材のスイッチングとするため、L材では滞留時間が長い蒸解となることがあらかじめ分かっていた。Brewster氏は「バルメットと協議し、N材で最大生産量となる設計としました。よって L材での操業では生産に余裕が出ます。」とコメントする。釜の設計生産量は N材で 1,866 adt/dayとした。

15人のオペレータはバッチ釜での操業経験しかなかったため、バルメットから提供したプロセスシミュレーターおよび双方向のトレーニングを受講した。これにより、試運転前に十分な教育を受けられることとなった。

安定操業

Brewster氏は、ImpBinでの薬液浸透が優れており、連釜の肝であると述べる。ImpBinは、チップのプレスチーミングと薬液浸透、フラッシングの 3つの機能を兼ね備える装置である。低温かつ長時間での薬液浸透のおかげで、リジェクトが少ないパルプが生産できるのが特長である。「バッチ釜ではリジェクトの多さに悩まされていましたが、現在はリジェクトが非常に少なくなっています。」と Brewster氏は述べる。

低温のおかげでヘミセルロースを保護でき歩留まりも向上できる。Brewster氏はまた、釜内における半径方向のチップコラムが均一で、液の循環が不要となった、と話す。蒸解温度はバッチ釜より下がり、L材で 140℃、N材で 148℃である。「設備は頑丈で信頼できます。何の問題もありません。」と Brewster氏は結ぶ。

想定通りの結果とプラスアルファ

最適化は継続中だが、これまでのところ想定通りの結果が出ている。加えて予想外の結果も現れている。50 adt/日の増産を達成しているが、回収ボイラーの負荷は変わっておらず、歩留まりが向上できたのがその要因だと考えている。酸脱効率は 5%から 10%向上した(リアクターの温度は以前より下がっている)。同一カッパ価で比べると、二酸化塩素と苛性ソーダの消費量が 15%から 20%ほど減っており、釜の洗浄ゾーンでの洗浄ロスが減ったことが起因していると考えている。BODが 20%下がり、CODも 12%下がっている。

省エネにも寄与しており、工場全体で 1,500 kWの削減となっている。蒸気は 40トン/時の削減となり、バイオマスで換算した場合には年間 80,000トンの削減となる。「エネルギーシステムに革命が起きました。」と Brewster氏は話す。

更なる最適化は必要だが、N材パルプの品質が向上しており、パルプドライヤーでの紙切れが 60%も減少しているという結果につながっている。パルプドライヤはもはやボトルネックではなくなった。

メンテ費用の削減効果は現在精査している最中だが、想定した目標通りに進んでいる様子。工場全体では 10%の費用削減となり、釜だけで考えると 10%以上の費用削減になっている。

「結果に非常に満足している。最適化を進めて更なる結果を期待したい。」と Brewster氏は話す。

 

Irving Pulp and Paper社では 14機あったバッチ式の釜を バルメットのCompactCooking式の連釜に改造した