バルメットの排水ソリューションによる省エネと薬剤使用量削減

2016年4月9日土曜日

フィンランドのTampere水道局は最近、同市 Viinikanlahtiの排水処理プラントにバルメットの汚泥濃度・含水率計とスラッジ脱水制御パッケージを複数基設置した。

Tampere水道局の Viinikanlahti排水処理プラントの立ち上げ後、ポンプ使用エネルギーの節約から、嫌気性消化の改善、結果として汚泥脱水の改善に至る、目に見える効果が即座に得られた。固形物管理の改善に加えて、今や測定値についても実験室でのたまの分析に代えてリアルタイムの固形物情報が得られるため、プラントの運用に価値ある先見の明をもたらしている。保守管理技術者 Ali Oksanen氏は次のように話す。「現在は処理パラメータが立方メートルではなくキログラムで表示されていますが、これは、処理の様々な段階を最適化するために大変有用なのです。」

Viinikanlahtiにおける生物的排水処理と化学的排水処理は、硝酸鉄を使用したリン凝集沈殿法と組み合わせた活性汚泥処理を基本としている。この処理は、異物ろ過、固形分除去、一次沈殿、曝気、二次沈殿で構成される。嫌気性微生物が排水汚泥を消化した後、汚泥は遠心力で脱水される。微生物が出したバイオガスは、プラント用の発電と暖房に使用される。

Tampere水道局の処理方法はもともと極めて効率が高くフィンランドと欧州連合の法的要件を満たすものであったが、2015年、化学的効率とエネルギー効率をさらに高めるために、バルメットの支援を仰ぐことが決定された。Tampere水道局の技術管理者 Heikki Syrjälä氏はバルメットがプロジェクトにもたらしたものを高く評価している。「新処理プラントを計画中の私たちにとって、これは最新技術によって何を実現すべきかを明らかにする良い機会でした。バルメットの品質と施工は優秀なものです」と Syrjälä氏は言う。

汚泥濃度・含水率計

 

一次クラリファイヤー処理の後、微生物処理と遠心分離脱水処理の前に、汚泥含水率を測定するため、バルメット汚泥濃度・含水率計(バルメットTS) 3基を使用する。Viinikanlahtiで使用中の回転円盤式一次クラリファイヤー 4基により、汚泥濃縮タンクにポンプで圧送する前に、排水中の固形物を沈殿槽の底部に沈殿させる。バルメットTSを取り付ける前に、クラリファイヤー 4基から一定間隔で順にポンピングが行われる。これは、クラリファイヤーの固形物がときどきすべて抜き取られ、水だけが濃縮タンクに圧送されるということを意味する。バルメット TSによる汚泥濃度測定値によって汚泥濃度が最低になるように管理しながら、4基のクラリファイヤーからのポンプ圧送の順序を決める。これにより、汚泥濃縮器に圧送される水分が多くなることを防止しているのである。運用エンジニアの Sami Ilomäki氏は、ポンプ圧送量の低下は劇的なものだったと言う。「以前は濃縮時の圧送量が 76 m3/時でした。それが今は、汚泥濃度を厳密に管理することで、50 m3/時まで減らすことができています。これでポンプに使用するエネルギーを節約し、濃縮時の余分な水分を少なくできました。」濃縮後の2基目のバルメットTS濃度計の測定値で、現在の微生物処理前の汚泥濃度は 3.5%から 5%に向上している。 Ilomäki氏は、「微生物処理での汚泥濃度が高ければ、加熱所要が小さくなり、さらに泡の形成も少なくなります。」と言う。汚泥濃度を最適化することで、加熱所要を抑えることができるだけでなく、微生物の滞留時間を長くし、バイオガス発生量を増加させる。

バルメット TSの動作に満足する Viinikanlahtiのエンジニア Sami Ilomäki氏(左)と Ari Oksanen氏

 

遠心脱水機による水分管理

嫌気性消化の後、汚泥は、トラックでの運搬と、農業、造園、およびその他の土壌改良用途への使用の前に、まず脱水される。汚泥の脱水は、遠心脱水機で行う。遠心力で汚泥から水分を吹き飛ばすのである。脱水した汚泥(脱水ケーキ)はコンベアでトラックに積み込まれ、プラントから運び出される。遠心脱水機から分離された液体は処理過程に戻され再利用される。Syrjälä氏は「汚泥脱水はエネルギーと化学物質を使う複雑な工程です。エネルギーも化学物質も無駄にせず、輸送コストを抑えるために、最適化は欠かせません。この工程を適切な方法で手作業によって実行するのは難しいのです。」と説明している。

 

脱水した汚泥(脱水ケーキ)はトラックによりプラントから運び出される。

 

バルメット DSは、脱水ケーキがコンベアに落下すると同時にその固形分濃度を測定する。

 

汚泥脱水の最適化

 
 

処理プラントコントロール室内のバルメット SDOオペレーターインターフェースに向かうバルメットのエンジニア Janne Katiskaと Sami Ilomäki氏

バルメットの解決策は、バルメット SDO(汚泥脱水オプティマイザー)制御パッケージによる脱水最適化である。バルメット SDOは、多変量のモデル予測制御(MPC)を利用する小型版のバルメット DNA制御システムで、遠心脱水機の運転を制御するものである。この時点では時間あたりキログラムで計測される汚泥の遠心脱水機への質量流量を安定させるため、バルメット TS汚泥濃度・含水率計を使用する。最適化の第1フェーズは、2015年12月に実施された。これにより、脱水用の高分子凝集剤を、以前の立方メートルによる体積ではなく質量流量に対する比率でコントロールできるようになった。質量流量を管理することで、2016年1月に最適化の第2フェーズが実施され、遠心脱水機内の固形分と脱水ケーキ内の水分をトルク制御と凝集剤の組み合わせで最適化した。

「バルメット LS測定法により、戻り固形物を50%削減できました。」と話すSami Ilomäki氏(中央)

バルメットマイクロ波式汚泥濃度/含水率計(バルメット LS)が遠心脱水機出口に取り付けられており、さらにもう1種の特殊計器、バルメット DSは、脱水ケーキがコンベアに落下すると同時にその固形分濃度を測定する。ここで、バルメット SDO特有の多変量のモデル予測制御が効力を発揮する。遠心脱水機のトルクが大きくなるにつれ、汚泥からより多くの水分が分離され、脱水汚泥の固形分濃度が高くなっていく。しかし、同時に、分離液の固形分が増加し、プラント内を無駄に再循環することになる。高分子凝集剤の投入量を増やせば、分離液の固形分濃度を下げつつ、脱水汚泥の固形分濃度を高めることができるため、最適のトルクと適正な凝集剤使用量を組み合わせて制御することで、エネルギーと化学剤の使用量をともに節約しつつ、遠心脱水機から戻される分離液の量を最適化し、脱水ケーキの乾燥度を高めることができる。





さらに良好な結果

新しい測定法と遠心脱水機脱水制御の導入はここまで非常に上首尾に進んだ。「以前の遠心脱水機運用パラメータは、脱水機からの戻り固形物(分離液中の固形分)の再循環を制限するため、大きく安全側に振っていました。現在は、分離液の 50%削減を達成しています。」と Sami Ilomäki氏は報告する。Ilomäki氏は要員が装置の操作に習熟することで更に向上の余地があると考える。「装置は操作しやすいものでシステムは極めてユーザーに優しい。パラメータの調整も容易にでき、別の高分子凝集剤の効果を測定することさえできるのです。今や、私たちは、処理工程内で起きていることについて、極めて分かりやすい全体像を見ることができます。」

 

 

使用開始後最初の 2ヶ月で、実験室での分析結果に対して十分な相関関係が容易に得られた。上から下に:嫌気性消化への脱水固体、遠心分離機からの分離液、脱水ケーキ固体。