ドライパルプ生産の増大

2015年7月31日金曜日

試運転 清め祓い: 兵庫パルプ工業株式会社社長 井川 雄治氏(左)、バルメット社 スタートアップマネージャー Seppo Pakkanen(右)

2012年10月、兵庫パルプ工業株式会社は同社谷川工場に新設パルプドライラインを投資することを決断した。同社は日本国内において、外販・未晒クラフトパルプ(UKP)の唯一の供給企業である。

兵庫パルプ工業株式会社は、未晒パルプのドライ化に対するバルメット社の納入実績に基づいて、トップフォーマーではなくフォードリニア型パルプドライマシンの選択を決定した。プロジェクトは計画通り完遂された。東京から南西に 435 kmの兵庫県に位置する同社谷川工場へ最初の部品が搬入されたのが 2014年1月、そして最初のドライシートが抄き上げられたのが同11月であった。

国内からアジア地域へ

兵庫パルプ工業株式会社では国内 UKP の需要先の中心が関西圏から北関東地域に移ったこと、また生産の 50%が中国・韓国・台湾向けとなってきたことから、2010年初めよりパルプドライラインの建設を計画した。

兵庫パルプ工業株式会社の新しいドライマシンのトリム幅は3.9 m、抄速は200 m/min

「何十年もドライイングマシンを構想・計画したが、需要家の運賃コストの低減と製造時のエネルギーの消費増大とのコスト差で合いませんでした。本プ ロジェクトは時代の変化(需要先が遠方化)とバルメット社の省エネマシンの誕生によって実現しました。」と兵庫パルプ工業株式会社社長 井川 雄治氏は話す。

「弊 社は、多品種の UKP を製造しています。バルメット社の設備は多品種の UKP に適応可能なものであると判断したことが採用する上での最大のものです。バルメット社は日本人スタッフが充実しており、建設・スタートアップにおいて経験 が豊かで、最適運転に向けての技術援助や運転後のメンテナンス体制に信頼出来ると思いました。」

谷川工場は連続蒸解釜1基、パルプ洗浄システム、高濃度タワー 3基、新設パルプドライライン 1基、ウェットラップマシン 3基を操業している。パルプドライラインの新設に踏み切った主要な根拠は次の通りである:

· 最終製品の均一性とお客様からの新たな要求に合致すること

· ウェットラップの場合の高い輸送コスト

· ウェットラップの倉庫での長い保管期間による品質劣化

納入の範囲

バルメット社はスクリーンウェットエンドドライヤーカッター並びにベールシステムを含むパルプドライライン一式を納入した。基礎並びに建屋の工事は兵庫パルプ工業株式会社の所掌である。バルメット社はそれ以外の据付工事全体を管理し、現場教育並びに立ち上げ後の指導員を派遣した。ドライラインは日産 770トンの設計である。ドライマシンのトリム幅は 3.9 m、抄速は 200 m/min。フォードリニア型の抄紙機には、ドライヤー前にコンビプレスとシュープレスが設置されている。乾燥用に30段のデッキ、冷却用に1段のデッキがある。

兵庫パルプ工業株式会社のカッターはパルプシートを所定のサイズに切り出し、250 kgのベールにする

カッターがパルプシートを所定のサイズに切り出し、250 kgのベールにする。ベーリング、包装、マーキング並びに搬送システムは全自動である。

井川氏は次のように話す: 「据付られた機械は、まず重厚かつ頑丈な設備です。設計を上回る能力があるとの印象を受けました。スタートアップ後、多品種のソフトウッドUKPを生産する難しさに直面しましたが、それを克服するために様々な設備の改善・調整、パラメーターの調整をスピーディーに行ってもらいました。」

「現状は、オペレータの操業技術の向上とともにマシンスピードも上がってきており、数ヶ月後には、設計能力を達成すると見ています。」

当プロジェクトは、基礎並びに建屋工事を除くすべてをバルメット社が EPCベースで一括工事を請け負った。それは、バルメット社にとって「ターンキー」として国内に納入する初めてのパルプドライヤープロジェクトであった。

今後の事業展開

井川氏はさらに続ける: 「多品種の UKP をドライ化し、客先のニーズに応える態勢ができ上がったので、国内はもちろん中国、韓国、台湾だけでなく東アジア全体への販路を広げて行きたい。」

「ドライ化によって輸送コストおよび品質劣化の問題が改善し、客先でのハンドリング、在庫コストも半減するので、販売範囲を広げることが可能になりました。」

ドライイングラインのエネルギーはすべて既設の回収ボイラー発電設備でまかなうことができたが、その分地域への余剰電力供給量は減少したので、新しいバイオマスボイラーの設置を計画している。

当プロジェクトの納入とスタートアップが無事終了したことを受け、お客様のパフォーマンスを向上・前進させるべく、今後は兵庫パルプ工業株式会社との協力関係は不断のサポートとサービスをもって続けられる。

 

兵庫パルプ工業株式会社 概要

兵庫パルプ工業は 1955年に創業した。兵庫県丹波市に工場を構え、国内唯一の未晒パルプ製造会社であり、東アジア地区の未晒パルプ市場を牽引している。年間生産量は 20万トンで、140名の従業員を有する。地域への電力供給も担っている。