Sunilaによるリグニンの有効活用

2018年8月17日金曜日

Stora Ensoの Sunila工場では、バルメットの LignoBoostTM技術を利用してクラフトリグニンを生産している。2018年には乾燥リグニン製品(製品名:LineoTM)の商業生産を開始し、化石燃料の代替原料として期待が高まる。

Stora Enso's kraft lignin LineoTM by Stora Enso, is a highly versatile product with numerous potential uses.

Sunila工場(パルプ工場、針葉樹利用)は、フィンランドにある Stora Ensoの工場としては中堅の規模で生産能力は 370,000トン/年である。大規模な工場ではないが、機動的かつ柔軟性の高い設備を活用して市場のニーズに合った製品を作っている。80年を越える歴史を有し、新しい技術の試験場として重要な役割を担ってきた。

「化石燃料から作られているすべてのものは、直ぐにでも木から作ることができます。これは Stora Ensoの戦略であり将来の目標でもあります。」と Sunila工場 開発ディレクター Jarmo Rinne氏は話す。「私たちはクラフトパルプを作るだけでなく、他の製品にも注力しています。北欧にある私たちのパルプ工場はそれぞれが特定の役割を持っており、Sunila工場はクラフトパルプやクラフトリグニンに加えテレビン油やトール油を専門としています。」

Sunila工場の乾燥リグニンはバルメットの LignoBoostTM技術を利用して作られている。抽出されたリグニンは洗浄および乾燥工程を経て粉末化される。粉末の乾燥リグニンを自動で重袋に充填するシステムも導入しており、高付加価値製品としてのリグニンの活用が広がることに期待を寄せている。

R&D志向の強いプロジェクト

Stora Ensoは長年にわたりリグニンの研究に携わっており、リグニンプロジェクトへの投資は 2011年に始まった。2013年、Stora Ensoとバルメットは Sunila工場への LignoBoostの納入に合意し、2015年1月から生産を開始している。今日の Sunila工場のクラフトリグニン生産能力は年間 50,000トンであり世界最大である。

バルメットは Stora Ensoが求めていた技術ソリューションの唯一のプロバイダーであったと Jarmo Rinne氏は話す。Stora Ensoの決断に影響を与えた要因は、バルメットが有する R&Dの知見と米国の Domtar Plymouth工場に納入した LignoBoostだった。

「私はバルメットのプロジェクトチームのプロ意識に感心しました。バルメットは過去に類似のプラントを建設していましたが、今回のプロジェクトが R&D志向の強いものであることは両社の間で初めからわかっていました。」と Jarmo Rinne氏は話す。

高付加価値製品のためのリグニン

Stora Ensoは、乾燥度が極めて高いクラフトリグニン(最高で97%)を生産した初めての企業である。Sunila工場で生産されるリグニンは単に原材料として販売されるだけでなく、ライムキルンの燃料としても使用されており CO2排出量の削減に貢献している。

Stora EnsoのクラフトリグニンLineoTMは 2018年初めに商品化され、同年3月の Bio-Based World News Innovation Awardにおいて ”Bio-Based Product of the Year” に選ばれた。合板、配勾性ストランドボード、単板積層材、ラミネート紙や絶縁材などの接着剤として化石燃料由来のフェノール樹脂系接着剤が広く使用されているが、代替の接着剤として LineoTMを使うことができ、木材由来の接着剤としては初の試みであると言える。

Stora Ensoの Sunila工場ではクラフトリグニンを生産している

「私たちは目標としていた製品品質に到達しました」

「Sunila工場のLignoBoostプロジェクト全体を通して、プロセス設計の最適化と潜在的な問題への対策においてバルメットと Stora Ensoは緊密に協働しました。Stora Ensoとの協働はチャレンジングであり、私たちの技術を高める良い機会となりました。現在も様々な開発を一緒に進めています。」とバルメット LignoBoostチームのトップである Hanna Karlssonは話す。

「全般的に見てプロジェクトはうまく進んでおり、バルメットと一緒に仕事をすることは喜ばしいことです。目標としていた品質には到達しましたが、市場のニーズに合わせた製品開発を継続しています。私たちのスタッフもプラント操業を通じて経験を積み上げています。」と Rinne氏は結ぶ。

「化石燃料から作られているすべてのものは、直ぐにでも木から作ることができます。」と Sunila工場 開発ディレクター Jarmo Rinne氏は話す

Desciption

将来のリグニン

リグニンは再生可能かつ木材由来で毒性もなく、化石燃料の代替原料の候補である。リグニンは高分子複合体で天然香料ポリマーとして豊富に存在する。自然界のリグニンは、セルロースとヘミセルロースを結合させる接着剤の役割を担う。リグニンはクラフトパルプ工程で抽出することができ、化石燃料由来の原料に代わる製品として様々な用途が期待されている。例えば、精製リグニンは、合板や化粧板の接着剤として使われているレジンの代替品として使用可能である。

 

共通の目的に向けた協働

「このプロジェクトでは、DomtarへのLignoBoostの導入から得た知見を活用しましたが、今までに経験したことのない問題もありました。プロ意識の高い Stora Ensoのチームと一緒に仕事をするのは喜ばしいことでしたし、豊富な経験を生かして共通の目標に向けて責任を果たしてくれました。全体としてプロジェクトは順調に進みスタートアップも成功しましたが、ファインチューニングを常に必要とするプロセスであるという事実から、このプロジェクトはR&D志向の強いものであると言えます。

Valmet project manager Jari-Pekka Johansson

これまでにも色々な問題がありました。例えば、Alvar Aaltoが設計した既存の建物内に設備を据え付けるのは容易ではありませんでした。しかしながら、3Dレーザースキャニングの利用やレイアウトの入念な 検討により最終的には良い結果を得ることができました。」とバルメットの当時のプロジェクトマネージャー Jari-Pekka Johanssonは説明する。

 

TEXT Antti Ratia PHOTOS Antti Ratia, Stora Enso and Valmet