iRollによる Irving社のジャンボロール生産効率の向上

2015年6月11日木曜日

カナダの New Brunswick州 Saint Johnにある Irving Paper社は、iRoll ニップセンサを内蔵したバルメット製のポリウレタンリールドラムと、リール巻き固さプロファイルの測定および制御システムにより、スーパーカレンダ紙用1号機ワインダの製品ロール生産効率を大幅に改善し、巻き固さ均一性を向上させることに成功した。本工場では現在非常に大径のリール巻取を均一なプロファイル、シートテンションで生産しており、そのおかげでワインダの操業効率も向上している。

本工場の操業部長である Mark Chatterton氏は、このプロジェクトの成功を次のように総括している。「我々はより高品質の巻取を生産しており、ワインダ効率も改善されました。iRollシステムの導入は非常に成功したプロジェクトであり、我々にとっても真にプラスの効果がありました。」 1号機は主に42 g/m2~67 g/m2スーパーカレンダ紙を生産している。

Irving Paper社の工場スタッフ:(左より)Justin Charron氏(PM 1 技術アシスタント)、Bill Davis氏(オペレーター)、Greg Ryan氏(PM 1 最高責任者)、Mark Chatterton氏(オペレーションマネージャー)

高品質の製品巻取を生産するための挑戦

スーパーカレンダ紙を生産する工場の多くは、均一巻き固さプロファイルを持つリール巻取を生産することは非常に難しい、と現在でも考えている。リール巻取がある径を超えると、巻取ロールの紙層間へのエア巻き込みの影響が大きくなる。非常に透気度の低い高密度スーパーカレンダ紙では、巻取紙層間に入ったエアが均一に抜けることは難しく、その蓄積はシートテンションへも悪影響を与え、しわやワインダでの紙切れを引き起こす。バルメットのHeikki Kettunen博士は、一般的は抄紙工程について以下のように説明する。「不均一なプロファイルは、巻取ロール外周表面下のエアの蓄積に影響を与えます。多くの場合、リールニップ直前で定常的な膨れのある状態でも巻取りは可能ですが、巻取ロール表面の紙が安定していないと、ニップ直前の膨れはロール下巻層へも影響を及ぼし、紙の折れやシワを引き起こします。」

これらのシワ等の欠陥によりワインダの生産効率は低下し、よく見られるように満巻が操作側通路に所狭しと並んでしまった状態を引き起こす。この解決策は、やむを得ず満巻1本からの取卸数を制限(小径化)することである。もちろんこのことは枠替回数の増大につながり、下巻および上巻損紙の増大を引き起こす。

これがまさに Irving Paper社での状況であった。同社の Chatterton氏は、特に高米坪品では、リール巻取径を 1270 mmの製品ロールの2卸分に制限していた、と報告している。より大径巻を行った場合巻取は巻き固さのムラを生じ、さらにシワがワインダでの紙切れを引きこしていた。当然ワインダの生産効率は低下し、頻繁な枠替により下巻損紙は彼らの目標値を上回っていた。

統合された2つの要素による解決策

この工場は、2006年にスーパーカレンダ紙を生産するために1号機を改造して北米初の OptiLoad TwinLine を導入したバルメット社からの解決策を求めていた。スーパーカレンダ紙を生産するヨーロッパの参考マシンを見学した後、同社は統合された2つの解決策が彼らにとって必要なものである、と結論付けた。第一に、同社はベンタ溝を有するポリマーカバーリールドラムの採用を決めた。ニップ長さの拡張はニップ通過時間を延ばし、適切な溝加工との相乗効果により巻取への巻き込みエアの低減を促進した。また、拡張されたニップはより固い巻取を可能とした。リールドラムカバーの材質は、RealSeal P という優れた耐磨耗性と長寿命を有するポリウレタンカバーが採用された。

第二に、リールドラムカバーの下に iRoll というらせん状の圧力センサが設置された。一般的な BM計による測定と異なり、初期設定を行えば iRoll は頻繁な保守作業を必要としない。ニップ圧と、それに関連するリール巻き固さプロファイルは連続的に測定され、測定値はプロセッサへワイヤレス送信される。プロセッサは1秒間に2回の頻度で測定値を更新する。このプロファイル測定値は2スタックの OptiLoad カレンダのプロファイル制御に用いられ、巻き固さプロファイルが設定値に一致するように制御される。カレンダでのプロファイル制御はそれぞれのスタックのトップとボトムの SymCD ロールのゾーン制御によって行われる。

 

スタートアップ後にすぐに得られた結果: 取卸数の増加

この新しいリールドラムは、2013年6月前半の 3日間で設置された。スタートアップ後の結果はすぐに現れた。Chatterton氏によると、「スタートアップ直後より、満巻から2卸でなく3卸分の製品巻取を生産可能でした。」 また、新たなリール巻取り条件を最適化するための技術者の継続的な助言として提供された、スタートアップ後のバルメット社の適切なサポートに対しても彼は言及した。また、オペレータも測定と制御については満足している、容易に操作できる、とコメントしている。この種の紙では標準的であるが、オペレータは目標となる巻き固さプロファイルを完全にフラットには設定しない。両端部が徐々に柔巻となるように設定する。この端部の柔巻部分が、層間エアが巻取ロールから抜け出すのを促進し、また端部が過度に固巻となることよって引き起こされるワインダでの紙裂けを防止する。カレンダのニップ加圧プロファイルは、グロスプロファイルへも影響を与える可能性がある。しかし、本ケースでは彼らの品質基準の範囲内である、と報告されている。iRoll はまたリールとカレンダの有益な診断装置としての目的も持っている。リールでの均一巻き固さのために必要なカレンダのニップ加圧プロファイルは、カレンダあるいはその上流側設備のロールの磨耗を示唆する可能性がある。Chatterton氏は、カレンダのゾーン加圧プロファイルのトレンドを計測することは、不均一なロール磨耗の予兆を教えてくれる、とコメントしている。

この新しい、応答の速い測定システムである iRoll は、製紙工場が高品質の巻き取りロールの生産を継続するための、新たな効果的な制御方法を行うことを可能にする。このフラットラインと呼ばれる新たな制御方法では、紙がオンリールしてから iRoll の計測データが開始されるまですべてのゾーンを均一ニップに保つ。プロファイル測定は、紙がオンリールしてからほんの数分後には有効になる。固巻部分、柔巻部分の場所が変化しても直ちに測定結果に現れ、その不均一を取り除くように制御される。

2卸から4卸へ

本工場では、以前は2卸であったが改造後は3卸分の良好なリール巻取を生産可能となった。しかしこの結果はそれ以降、さらに改善された。Chatterton氏は以下のように総括した。「我々はエア巻き込みによるしわを排除しました。これにより紙切れとワインダでのカールが低減しました。我々は、現在より均一なテンションプロファイルと均一な巻き固さを持ったロールを生産しています。5卸分の大径巻取りを行ってみましたが、このような大径巻取りの扱いは難しかったのです。そこで、現在は全てのグレードにおいて直径 1270 mmの製品ロール4卸分のリール巻取を行っています。」

改造前後の平均値を比較すると;

  • 枠替回数が 23%減少した
  • ワインダも含めた下巻損紙が 20%低減できた
  • リール巻取1本あたりの取卸数は 16%増加した
  • リール巻取直径を 16%大径化することができた

iRollだけが理由ではないが、枠失回数も 70%減少した。この iRoll のフィードバックは OptiReel Plus の操業条件調整、最適化に有効であった。このような大径巻取りが可能になったことと、ワインダでの紙切れが減少したことによってワインダの操業効率が向上し、結果的に本工場ではワインダのメンテナンス業務をシャットダウンを待つことなく実施できるようになった。iRoll システムを組み込んだソフトカバードラムは Irving Paper社にとって、優れた投資対効果を生み出すことができた。