燃料の柔軟性に注目

2018年8月17日金曜日

Turun Seudun Energiantuotanto(TSE)の新しい多燃料ボイラープラントは、現在最も低いコストで入手できるどのような燃料でも利用できる可能性のような、CFB技術の最良の特徴を持つ優れた例である。

2017年12月1日、フィンランド南西部沿岸の Naantaliにある TSE社の新しい NA4発電所の商業運転が開始した。発電能力は 146 MW(電力)、250 MW(熱量)であり、年間では 800 GWh(一般家庭 18万世帯分)、熱量 1,550 GWhを計画している。

「投資の主な動機は、50年以上経過した 3ブロックからなる微粉炭ボイラーが寿命に達したことでした。私たちは、経済的、効率的、そして持続可能な方法で、将来的に地区の熱供給を確保する方法を解決しなければなりませんでした。」と TSE社 マネージングダイレクター Tapani Bastman氏は話す。

気候変動との戦い

TSE社は Turkuや Naantali、またその周辺向けに地域暖房と電力を製造し、同様にプロセス蒸気を必要としている近隣の企業に供給している。それは Turku Energy社、Fortum Power and Heat社、そして Raisio、Kaarina、Nanntaliといった Turku近隣の自治体に所有されている。同社の 15 kmに及ぶ地域暖房のトンネルはヨーロッパの中でも長いトンネルの一つである。

もうひとつの動機は、長期にわたり、気候変動との戦いや燃料としての石炭を再生可能エネルギー源(主に現地のバイオ燃料)に置き換えたいという願望であった。さらに、フィンランド政府は、2029年にエネルギー生産における石炭の使用が法律で禁止されることを決定した。

「これらすべての理由から、石炭を使用できなくなったときに、燃料の柔軟性が高くあらゆる種類のバイオ燃料を泥炭や他の燃料と一緒に燃やすことができる多種燃料発電所が必要でした。」と Bastman氏は続ける。 「フィンランドでは、政治転換のたびにエネルギー課税に変更があります。 市場価格は政治的な決定に基づいて前後に変動するため燃料に頼ることはできず、燃料の混合を柔軟に変更できるソリューションが必要となります。」

混合燃料の柔軟性

TSE社は燃料の柔軟性要件を満たす循環流動床(CFB)技術を選択した。品質の価格に対する比率が最良であることを考慮し、ボイラーセクションをバルメットに選定した。

バルメットは、100%石炭燃焼能力があり、木質系バイオマス(0-75%)、農業系バイオマス(0-15%)、泥炭(0-95%)、そして廃棄物固形燃料(SRF)(0-5%)を設計燃料混合物としたCYMICボイラーを納入した。

「私たちの目標はバイオマス 70%でプラントを稼働させることです。バイオマスだけで稼動するためには、追加的な投資が必要です。一方で、私たちは考慮すべき他の興味深い燃料の選択肢も持っています。」と Bastman氏は付け加えたが、彼はそれが何かを明らかにしたくない。

バルメットの納入には排ガス浄化システムや、例えば排出量の監視やエネルギー消費量の管理など広範囲な自動化ソリューションも含まれていた。「同じサプライヤーのオートメーションおよびボイラー技術の両方を備えたバルメットのトータルソリューションが、私たちにとって最も効果的だと確信しています。」と Bastman氏は言う。

要求される燃料での高い効率性

新しい CFBボイラーは、要求される燃料混合にかかわらず、高い効率性と信頼性の両方を特長とするように設計されている。交換頻度が低いボイラー部品と補助機器の冗長設計により高い信頼性が保証されている。

発電所は再熱蒸気システム、2段階の地域暖房システム、そして必要なときに熱のみを生産するバイパスラインで構成されている。燃料の品質と比べ、555℃/160 barの主蒸気、550℃/40 barの再加熱蒸気といった極めて高い蒸気パラメーターが選択される。熱容量は 390 MWthである。

農業由来のバイオマスや SRFのような設計燃料の中にはかなり高い量の塩化物(0.2-0.4%)を含んだものがあり、特に最終過熱器および最終再熱器内の蒸気温度が555℃と非常に高いため、高温腐食の危険性がある。

高温腐食の危険性を軽減するために、最終過熱器および再熱器表面は両方ともサイクロンループシールの床材の内側に位置する。床材は腐食性ガス成分から熱表面を保護している。

納期通りで予算内に完了したプロジェクト

広範囲なプロジェクトは納期通りおよび予算内で完了した。 「全体的にプロジェクトは順調に進み、バルメットとの協力はオープンで建設的でした。特に注目したいのはプロジェクト全体における LTIF(休業災害度数率)が 2.13件/100万時間だったことであり、これは世界記録の結果です。」と Bastman氏は言う。

ボイラーの利用可能性 100%

タービンの問題のため、ボイラーは予定の 60-70%の軽負荷にて運転している。「しかしながら、ボイラーの利用可能性は 100%です。ボイラーは 100%の石炭も しくは 70%のバイオ燃料のどちらで非常に良く稼動し、燃焼の問題はありません。」と Bastaman氏は述べている。商業運転が開始した最初の 1ヶ月の間、NA4発電所はバイオ燃料 70%、泥炭 4%、石炭 26%と様々な混合燃料で稼動している。バイオ燃料はウッドチップ、樹皮、おがくずの混合物であった。

異なる燃料と燃料品質を備えた多種燃料能力と柔軟性がうまく達成されている。NA4発電所は広範囲に及ぶ燃料で稼動することが可能であり、同時に蒸気パラメータの保証を実現している。

古い NA1および NA2発電所はもはや使用していない。TSE社の次の課題は石炭焚の NA3発電所をどうするか考え出すことである。Bastaman氏によると、その地域暖房の熱生産量を増加させ NA3の能力を置き換えるために、煙道ガス凝縮器を NA4ユニットに追加することが話し合われている。

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