産業の世界をバーチャルに形作る

2018年6月27日水曜日

コンピューターゲーム愛好者にとっておなじみのバーチャルテクノロジーとそのアプリケーションが、産業界でも一定の地位を築きつつある。バルメットの Mika Karailaは、工場の計画段階やメンテナンスプロセスにおいてバーチャルツールを導入する利点を強調する。

Mika Karaila

「仮想現実は、複雑な生産環境や生産ラインの機械装置を可視化する優れたツールです。工場内で、インテリジェントな製品や道具、サービスを利用することで、メンテナンスが簡素化され、コスト削減の一助になります。」と、バルメットのオートメーション R&Dリサーチディレクター Mika Karailaは説明する。

バルメットは 2016年から、工場における修理を可視化し容易にするための、インテリジェントなメンテナンスアプリケーションと拡張現実(AR)機器の開発、試験を行っている。仮想現実(VR)は、ユーザーがその世界に入り込んで相互交流できる人工的な三次元環境である。

初めての場合は、仮想の周囲環境を歩くことに少々ぎこちなさを感じることがあるかもしれないが、ひとたびヘッドセットと操作スティックに慣れると仮想世界で面白く魅力ある体験ができる。

「いくつかの展示会で当社の VRツールを披露してきました。デモンストレーションには人々が列を作り、体験した人は必ず熱狂的な感想を返してくれました。私たちは主要な技術的問題を何とか克服し、現在はお客様と共同でツール開発にあたっています。これで VRに関する問題に本当に集中することができます。」

拡張現実によりメンテナンス費用を節減

バルメットは今最も進んだ技術を用いて、コスト増となる生産ラインの運転停止を予防し、さらには生産における環境負荷を削減しようとしている。

Karailaは、拡張現実(AR)は貴重なメンテナンスツールであると強調する。メンテナンスは、複雑な工場環境では非常にコストがかかる困難な作業になり得る。仮想技術は、運転作業プロセスを最適化し、安全と資産パフォーマンスを高め、生産性向上を可能にする。

制御室は工場やプラントの中枢神経であり、プロセス段階のさまざまな部分で測定された数千もの数値が、配管図や計器図の描かれたスクリーンに表示される。ARの技術を借りて、このプロセス情報をヘッドセットにバーチャルに映し出すことで、保守員は機械をメンテナンスしながら必要な情報を得ることができる。

完全な人工環境を作り出す VRとは違い、ARは現実世界の環境を利用しその上にデジタル情報や画像をリアルタイムに表示する。

Mika Karaila

「一例として、パルプ工場や製紙工場でプロセス計測を可視化するバーチャルソリューションを作ってみました。技術者たちはモバイル機器や最近のウェアラブル機器の助けを借り、保守説明書の参照に苦労することなく、機械部品やバルブ等各種機器のプロセス計測を容易に行うことができました。この技術によりオペレーション全体がより安全で、管理可能になります。」と Karailaは言う。

初めての作業に経験ある作業者と一緒に取り組む時など、360度の映像を撮影することもできる。「その作業を 1人で行おうとするときに、AR機器によって作業段階が異なることを確認することができます。保守作業において常に良好な作業結果を得る1つの方法であり、しかも安全にも配慮した方法です。」と言う。

バルメットは、プロセス制御のためのオートメーションおよび情報プラットフォームとして Valmet DNAエコシステムを開発した。これはすべての制御すなわち、プロセス、機械、品質、監督、走行、さらに最適化と装置状態のモニタリングを単一のプラットフォームで実行する。
「Valmet DNAのタグを 3D世界に接続すれば、すべての情報を三次元の周囲環境に構成することができます。私たちは、エネルギー、パルプ、製紙企業向けにいくつかのアプリケーションを持っています。1つのプログラムをどの分野のお客様にも合うように構成することができます。」

工場建設のためのデジタルプラットフォーム

発電所や製紙工場、そして工場内機械装置の設計過程でバーチャルツールを利用することができる。「お客様と協力してバーチャルな周囲環境を作り、それを複数のユーザーと共有します。世界の別の場所にいても、問題を具体的に示して解決することができます。」と Karailaは言う。

「例えば、工場の計画プロセスに VRを利用し、お客様や建築家と、パイプラインが適切な場所にあるか、メンテナンス作業に十分なスペースがあるか、あるいは扉や窓を別のどこかに設置する必要があるかを相談することができます。」と彼は加える。

「プロジェクトを迅速に進める方法であり、設計段階で問題を解決することができます。計画段階や建設段階で、たいてい離れた場所にある建設現場に必ずしも出かける必要はありません。ですから時間とコストの節約になります。」

未来の産業スタンダード

大きな技術的課題が解決されたことで、Karailaはバーチャルツールが現実世界のアプリケーションにまもなくブレークスルーを起こすだろうと確信している。

「ソフトウェアや機器といった技術的資産は、価格の点でますますアクセスしやすくなってきています。生産現場に取り入れる装置が、消費者市場ですでに馴染みの機器という場合もあります。コンピューターゲームに親しんだ若い世代は、VRや ARを職場で体験すること、応用することに特に熱中するようです。」

便利な VRアプリケーションの一例は、ゲームのような工場トレーニングツールである。バーチャルトレーニングによって、作業者は危険な状況に正しく対処するための準備ができる。

また、ビデオゲーム機で慣れたジェスチャーやスピーチによる操作は、仮想制御システム用の次世代ソフトウェアが整った生産管理室にまさに適している。

「私たちは、バーチャル技術における知見を発展させ、予知段階で補助的人工知能を用い、フィルター交換のような単純作業については、実施すべき定期保守がリアリティ技術によって示唆されるような環境を作ることを目指しています。」