お客様のニーズが技術革新を推進

2018年3月22日木曜日

お客様のニーズとグローバルでの大きな動向が、バルメットの 220年にわたる産業史を通じて常に製品開発の牽引力であった。資源効率と開かれた技術革新がバルメットの製品開発とお客様とを結び付ける。製品開発での新たな飛躍のためインダストリアル・インターネットとデジタル化に狙いを定めている。

バルメットの歴史は、衣料品工場である Tampereen Verkatehdasが設立された 1797年に始まる。この工場は後に Tamfeltとして知られるようになった。Tamfeltは 2009年に企業買収によってバルメットの一部となった。つまり、バルメットの 220年の産業史は織物の製造から始まり、現在もこの伝統はTampereで継続されており、バルメットファブリックスが機械用具の開発と製造を行っている。
今日のバルメットは様々な企業買収、合併そして企業分割を通して築かれた。こうした歴史の中で、実際、バルメットは航空機から鉄道車両まで、並びにチェーンソーから大砲までのほとんどすべてを開発し製造してきた。現在、バルメットはパルプ、紙、板紙およびティッシュ、さらにエネルギー産業に向けての技術、オートメーションシステムおよびサービスを開発し製造している。
差動駆動を有する抄紙機で市場に参入

バルメットの抄紙機製造の第一段階は 1946年に始まっており、このときフィンランド国所有のいくつかの金属加工所の合併が行われて、Valtion Metallitehtaat(”State Metalworks” 「国営金属加工会社」)が設立された。

1950年代になると、バルメットは早くも自社製の差動駆動機械を用いて抄紙機市場に参入した。この機械では個々のモータグループは自己調節によって無段で作動した。この方法によって、正確に正しい速度に調節することができた。1960年代にはバルメットは自らの機械基盤を拡張し、研究活動とネットワークを開発し機械納入の能力を増強した。

バルメットのパイロットプラントは製品開発のためのまたとない機会を提供した。1972年以来、バルメットは専用のパイロット抄紙機を所有している。「パイロット抄紙機の助けを借りて、新しいアイデア、たとえ過激なアイデアであっても、小さくはあるが現実味のあるスケールでテストすることができました。」と、バルメットの名誉テクノロジーディレクタである Jouko YliKauppilaは語る。

80年代と90年代の牽引力としての規模の経済

1980年代と 1990年代では、規模の経済が森林産業では支配的であった。より幅広くてより効率の高い機械が造られ、より速い速度と高い効率で運転された。「とりわけハイドロリックヘッドボックスとギャップフォーマが 1980年代に開発されたときに、新しいベストセラー製品が生み出されました。その結果、私たちは抄速を上げることができ、これが生産の増加とより良い紙品質につながりました。」とYli-Kauppilaは語る。
新しいソリューションは、例えば抄紙機のロールについては特にプレスのストーンロールを置き換えるため、またサクションロールの耐久性を改善するために開発された。

1997年に立ち上げられた OptiConcept技術は優れた製品であることが証明された。抄紙機は旧来のものよりも 25%速くなった。工業デザインを取り入れたおかげで、機械は操作もメンテナンスも容易となった。

お客様との関わり

2000年以降、製品開発に向けた挑戦は中国からやって来た。つまり、中国ではより幅狭で低速の機械が必要とされていた。同時に、西洋ではオンライン取引によって印刷筆記用紙の消費の下降傾向が始まっていた。これらの変化に対する反応として、バルメットはモジュール式マシンコンセプトである OptiConcept Mを開発した。これは板紙に適しており、またわずかな改造で印刷筆記用紙にも適したものになる。

今世紀になって明確な変化がお客様の要望に現れてきた。1980年代にはお客様の関心は技術そのものにあったが、今日ではそれを用いて何ができるかが問われるのである。

「技術開発を行うときに、私たちは主要なお客様とサプライヤばかりでなく大学や新興企業とも緊密な協力を行っています。」とバルメットの研究開発部門の VPである Ari Saarioは語る。

バルメットはフィンランド、スウェーデンおよびポルトガルでさまざまな専門エリアに焦点を合わせた技術センターを合計 16所有している。毎年、400以上の人年と 6500万ユーロを研究開発に使用している。

資源効率への関心の高まり

持続可能性、資源効率、循環経済および責任への関心は 21世紀の初めに高まり始めた。誰が最少の原材料とエネルギーを使って生産するかといった競争が始まった。

「これによって製品開発の焦点も変わりました。そして、この変化の結果として、私たちが新型のティッシュマシンと板紙マシンを開発しなければならなかったのですが、別の飛躍が生まれました。」と Ari Saatioは説明する。

もう一つの強い開発の傾向は軽量化である。お客様が現在求めているのはトン数ではなく、性能である。「同じ量の原材料からもっと多くの製品が得られます。」

新しい原材料

現在におけるもう一つの大きな動向は、パルプ工場がバイオ製品の工場になることである。ここでは、貴重な副生成物が循環経済と持続可能性の原理に従って原材料の流れから得られる。

プロセスで分離される 1つの重要な原材料はリグニンであり、これは木材の 20-30%を構成している。リグニンは石油からのプラスチックとカーボンファイバーの代替品の製造に用いることができ、また例えば接着剤中の石油由来物質の代替に用いることができる。LignoBoostプロセスでは、パルプ製造中にリグニンを分離する特別な装置が使われる。

パルプはもはや単なるパルプではない。これはミクロ- またはナノクリスタルであり、あるいはミクロ- またはナノフィブリル化したセルロースでも有り得るわけである。例えば、これらから繊維工業のための新材料が供給される。

新しい動向は、3D印刷を用いた製造にも見ることができる。これは、スウェーデンの Sundsvallにあるバルメットの研究センターのパイロットプラントで開発中である。3D印刷は多くの新世代の装置と関係がある。特に機械の予備品を 3D印刷で製造するのに金属を用いることができる。

「新しい製造技術は、材料を節約しながら以前より効果的に装置部分を設計できることを意味しています。」と Saarioは語る。

最前線での燃料柔軟性

エネルギーの再生可能な形態とエネルギー節約は製品開発に反映される。燃料の柔軟な使用は、費用有効性とともに発電所の調達基準の上位に位置している。

1980年代以来、製品開発は北欧諸国のあらゆる場所で操業中の産業の重要なクラスター、並びに技術会社、顧客、大学および研究機関で働く数多くのエキスパートによって推進されてきた。また、発電および回収ボイラプロセスに関連してフィンランドではいくつかの大規模研究プログラムがあった。

「同時に、創造性と大胆さには事欠きませんでした。スタートアップの開始は会社特有のものがあり、リスクはコントロールされていました。また、製品は納入プロジェクトとの関連で開発されました。」と、バルメットのエネルギーセクターの研究の出資者とのネットワークを管理する Matti Rautanenは語る。

エネルギー産業、研究の焦点エリアと成功から得たバルメットの現在の専門知識は、結果として多種燃料ボイラに至っている。「燃料ベースが広がれば広がるほど、お客様はどんな種類の原料をどのような値段で燃焼すべきか、またどの副流を利用すべきであるかについての技術的および経済的展望から、より良く最適化を図ることができます。」と Rautanenは語る。

エネルギーの分野では、特別な専門知識についての当社の領域にはバブリング流動層、循環流動層およびガス化技術が含まれる。新しいアイテムとして、様々なバイオマス精製技術が研究されている。
 
「バブリング流動層技術は、低い熱価を持つ燃料に対して適しており、循環流動層技術は燃料のより幅広い選択を可能にします。こうした専門知識は蒸気パラメータをより高いレベルまで上げることを可能にしました。」と Rautanenは語る。

エネルギー分野と紙・パルプ産業の両方において、測定技術とオートメーションがプロセスの不可欠な部分であった。メンテナンス作業においては、予防保守およびメンテナンス休転の間隔延長が開発の一つの焦点であった。

インダストリアル・インターネットを用いての飛躍

バルメットの製品開発における新たな飛躍の狙いはインダストリアル・インターネットとデジタル化である。「今年はインダストリアル・インターネットとデジタル化が私たちの R&Dの特別な焦点エリアです。」と Ari Saarioは語る。

オートメーションと測定装置はパルプ、紙および板紙産業をもっと効率的な資源の利用へと導いてくれる。インダストリアル・インターネットの一部は仮想現実である。診断の助けによって、サービスとメンテナンスもまた躍進を遂げた。